スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

かみさまのこと

生まれ故郷からとても遠く離れた土地まで、
色々なものから逃げに逃げてきた旅人の男がいました。
彼は、人を疑い続け、
そのことによって生まれた土地にいられなくなってしまったのです。
目には真っ黒なくまができ、
疲れ果てた四肢を引きずりながら男は行過ぎる人々にこう質問し続けました。

「君のかみさまがどこにいるのか、教えてくれないか?」

少年はさっと指を天に突き上げ、言いました。
「僕のかみさまは、お空の上にいて、いつも僕らを見守ってくれているんだ」

少女は少し困った顔をしてこう答えました。
「あんまりわからないんだけど、きっと、
 ここからずうっと西の方に、大勢いらっしゃるんだわ。だってお母さんから聞いたもの!」

老婆は、柔和な笑みをたたえながらつぶやきました。
「神様はどこにでもいらっしゃる。玄関にも台所にも、お風呂場にも。
 でも敢えてどこにいらっしゃるかと言われれば、やっぱり居間の仏壇のような気がするわ」

本を片手に青年は語気荒く叫びました。
「神!?ナンセンスだよそんなもの。いないのさ、どこにも。全くね。
 大昔から大勢の天才的な学者が実証しようとした神の存在。
 確かに神が存在すると立証できた説が一つでもあったろうか?
 まあ、彼らほどの頭脳が無くとも、神など存在しないことは明白だがね!
 だって神がいるのならどうして人間はこうも進歩せず馬鹿な争いや
 不毛な破壊を止めようとしないんだ?どうして善人を苦しめて早死にさせてしまうのだろうか?
 もしそれが神の与える試練だとしても、僕はそんなものを神とは認めない」

旅人の男は困り果てました。
誰に質問しても、結局神について何一つわからなかったからです。
彼は、逃げに逃げる最中で病に侵されていました。
故郷で死ぬことは最早かないませんが、
彼は、せめて今わの際くらいは、
疑うことしか知らない自分を忘れて迎えてみたいと思ったのでした。

そこに、ピンク色のTシャツを着てメガネをかけた
オタク然とした男
が鼻歌交じりに歩いてきました。
あまりにも呆けた顔をしていたので、
旅人の男は質問をせずに無視しようとしましたが、一応、例の質問を投げかけました。
するとピンクTの男はこう言いました。

「僕のかみさまは、日本人の女性で、愛媛県というところで生まれました。
 彼女は歌を歌うことがとても好きで、
 小さい頃から歌手になりたいという夢を抱き続けました。
 そして大変な努力の末にその夢を実現させ、
 彼女の歌う歌によって大勢の人が感動し、心を救われることになりました。
 僕もその中の一人です。
 彼女には自分がやっていることの大きさがおそらくわかっているはずですが、
 そのことにかまけて努力を怠ったり、横柄な態度をとったりすることは一切ありません。
 素晴らしい人格者です。おっと、神様なのに人格者とはちょっとおかしいでしょうかね。
 ・・・太古の昔より神々は各所に存在してきましたが、
 彼らは自分以外の神を認めないことにより、
 長い長い争いの歴史を人類に課してしまいました。
 ただ、僕の神様は、そんな争いごとや嫉妬、妬みや嫉みなんかも全て包み込んで、
 大いなる歓びに変えるという力を持っているのです。他ならぬ彼女の歌によって、ね。」

歌・・・、歌を歌うだけで人を救えることなんてあるものだろうか?
旅人の男は、
この胡散臭いメガネの男の言うことがにわかには信じられませんでした。
彼の風体も疑わしいのですが、
何より神について、これほどまでに具体的なことを話した人間ははじめて見たからです。
色々な人から聞いた神の話を頭の中で反芻しているうちに、
旅人の男は、メガネの男に声をかけられました。

「あの、これから僕のかみさまが歌を歌ってくれるんですけれども、
 よければご一緒にどうですか?」

突然の申し出に旅人の男は戸惑いましたが、
ここでかわらず道行く人に声をかけても何もわからないだろうことは予測できたので、
最後の体力を振り絞って、申し出を受け入れることにしました。


何時間経ったでしょう。
箱舟のような会場からふらつく足取りで出てきたとき、
旅人は今までの人生で体験したことのないような強い衝撃を感じていました。

「どうでしたか?」

全身筋肉痛でヘロヘロとした足取りのメガネの男は、
旅人に尋ねました。
旅人は、メガネの男が言っている意味を
確かに理解できたわけではありまんでしたが、
しかし、今まで感じたこと無いような感情が
胸にこみ上げていることははっきりと感じていました。
旅人は、メガネに尋ねました。

「この今までに感じたことの無い感情は一体何なんだろうか?
 とても心地よい、この感情は・・・」

メガネは言いました。

「それはきっと、歓びですよ。かみさまが歌によって授けてくれた歓び。
 この箱舟で彼女の歌を聴いた誰しもが、胸に抱くものだと思います。
 もちろん、この僕も」

「歓び」・・・それが一体どういうものなのか、
旅人にはやはりはっきりとはわかりませんでしたが、
ふと気づくと、
彼はボロボロの身体を引きずりながら、
今まで逃げてきた道を引き返そうと、
ごく自然に故郷のある方角へと歩を進めていました。

逃げてくるときに感じていたあらゆる葛藤、しがらみは、
今や霧の如く消え去っています。
そんな自分の心を、旅人はとても不思議に思いました。
心の中で、さっきまで聴いていた彼女の歌声が
いつまでも鳴り響いているような気がします。

メガネの男はご飯を食べようと誘ってくれたのですが、
旅人には、
一刻も早く故郷へ帰ることが何よりも大事だと思えたので、
メガネの申し出を断りました。
メガネは少し寂しそうな顔をしましたが、
別れ際に手を差し出し、こう言いました。

「また、一緒に彼女の歌を聴きましょう」

差し出された手を堅く握り、
旅人はゆっくり、ゆっくりと歩き出しました。
歩く先に、光が差し込む確信を不思議と感じながら。


※これはやや比喩表現が多めのライブレポです


水樹奈々/Orchestral Fantasia

スポンサーサイト

テーマ : 水樹奈々
ジャンル : 音楽

プロフィール

暗黒聖骸血盟

Author:暗黒聖骸血盟
ちょっと憂鬱で、
真剣なロックをやっております。
バンドだかサークルだか
よくわからないけれども、
とにかく、楽器を演奏して
曲をつくったりして、
たまにアニメや漫画や極まれに社会学や文学の話などもします。
水樹奈々なども
上等な感じであります。

ちなみに我々は、
hikikomori3(Gu/Vo)
は(B)
マツナミヒカル(Dr)
の3人から成ります。

Blog更新はほとんど
マツナミヒカルの仕事です。
つまりマツナミの趣味嗜好が
色濃く反映されるBlogである、
と言えることになりそうですね。
こりゃあ恥ずかしいや!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
06 | 2009/07 | 08
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。